cross roads






 
交差点という名の分かれ道を 人は自らの道を求めて渡ってゆく
 ある道は険しく ある道は輝き ある道は遠回り
 しかしどの道もみな同じように未来へとつながっている
 行きかう人の激しい波に 自らの道を見失わないよう
 必死に 前だけを見つめながら 人は今日もクロスロードを渡る





 静寂の中、ゆったりとしたピアノの音だけが流れてゆく。
部活の生徒すらいない放課後の音楽室は
大地に吸い込まれてゆこうとしている夕陽に照らされ、
何もかもがほんのりと茜色に染まっていた。



「……何の曲だ、それ」

窓の外を眺めていた大河が不意に尋ねた。
すると尋ねられたてらは演奏の手を止め視線を鍵盤から兄の方へ移す。


「ジム・ブリックマンの『cross roads』
好きだよーこの曲。どうしたらいいか道に迷ったらいつも弾いてた」



グランドピアノの上に一列に並ぶ白と黒の鍵盤を指先で撫でながら
てらは微笑むように少し目を細める。


「この曲は俺的応援歌なんだよ。分かれ道を選んで進んでいく人達への」



「迷いも、不安も、この曲聴いてるとだんだんなくなってきて、
どんな道を選んでもがんばろーって気になってくるんだ」




「道が険しかろうと、他人と違っていようと?」


窓辺から離れてグランドピアノに肘をつくと大河は薄く微笑む。
それに応えるように顔いっぱいの笑みを浮かべると首を大きく縦に振る。


「そう!みんなそれぞれ道を選ぶんだ。なりたい自分になるために」


 てらはそう言って再び曲の最初からピアノを弾き始める。

柔らかで穏やかなメロディーは歩き出す者をそっと後押しするようで、
どこか哀愁が漂っている。
別れゆく過去への寂寥(せきりょう)だろうか。 しかし、不思議と振り返りたい気分にはならない。
過ぎた時間を抱いて、ただ前を向いて進んでゆきたい。
この曲は聞く者をそんな気分にさせた。


「未来へ向けて進んでゆくその道の先で、また会えるといいな」


 
同じ時を過ごした全ての人達と―――


大河の言葉にてらは演奏の手を止めず、ただ微笑んだ。


 中ほどを抜け、徐々に盛り上がってくる曲はテーマフレーズの最後を
ゆっくりと繰り返し、そして終止線に繋がる。



「…きっと会えるよ。道は交差点みたいに交わり合ってるもんだから」


 
いつか、人生の交差点で―――



言っててらは窓の外を見やる。
夕陽はすでに空にはなく、薄い闇が茜色だった空を群青に染めている。
遠く広がるその景色に眩しそうに目を細めるとてらと大河は互いに顔を見合わせた。


 「さて、もう行こっか」


それから二人はゆっくり歩き出した。同じ歩調で、夕闇のうずくまる廊下の方へ。
二人が音楽室から姿を消すまで、二人の背中を黒光りするピアノはじっと見送っていた。





 交差点という名の分かれ道を 人は自らの道を求めて渡ってゆく
 自らの進む道を信じ いつか再び巡り会う日を信じ
 人は今日もクロスロードを渡る













お疲れ様でした。しじみ発ヤマもオチもないプラテをお送りいたしました(汗)
タイトルにもなっておりますジム・ブリックマン氏の
cross roadsという曲を題材にしたプラテが書きたくて…。
書いた時期的にはぼく夏が終わった頃のものです。
またBリードの皆さまに会えるといいなぁとそういう思いを込めまして。
でも卒業っぽい話でもあるのでいいかなと思い(何が)この時期にアップしてみました。

 このプラテはcross roadsが一曲流れている間に読んで、
曲の終わりと同時に読み終わるくらいにしようと思ったのですが、
どうにもプラテの方が短すぎたかもしれません(苦笑)
ぜひこの曲、ツクエノウエさま (管理人:fokaさま)にある
fokaさまバージョンで聞いてみて下さい!ステキな曲です!
でもプレイヤーズ王国ですとMid Radioをダウンロードしないと
いけないのですよね…PCの方に余裕のある方はぜひ!
ダウンロードなんかしてられるかー!という方は管理人までこっそり
メルしてやって下さいませ。ちょっぴりウルトラCを使います(何)

 短いプラテでしたが、ここまで読んでくださってありがとうございました!





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