これがわたしの生きる道




  ささやく冗談でいつも つながりを信じていた

  砂漠が遠く見えそうな時も

  ぼやけた六等星だけど 思い込みの恋に落ちた

  初めてプライドの柵を越えて



  「渚」 作詞・作曲:草野正宗




 慌ただしく過ぎていった夏休みの残像のように入道雲が遠い空であぐらをかいている。
騒動の連続だった夏の日々に思いを馳せてみると、つい昨日のことも
ずい分と昔のことのように感じられる。白瀬泰三の下みんなで映画を作り上げたり、
夢の世界の住人達と共に戦って夢と自分達の世界を守ったり。
今ではそんな日々がそれこそ夢のように感じる。
一気に気が抜け、半ば放心状態でてらは空を見上げていた。
こうしているとため息の一つでもこぼれそうなものだが、不思議とそういう気も起きない。
ただ屋上の手すりに肘を置いて空を見上げているだけだ。



 「…ここは立ち入り禁止のはずよ」



突然てらの背後からそんな言葉がかけられた。
間違えようもない、聞き覚えのある声。



「…渡瀬さん…!」


てらが慌てて振り返ると、屋上の出入り口には腕組みした渡瀬玲子が立っていた。
見たところ仕事中のようだ。きりっとした瞳に射抜かれ、てらはばつが悪そうに苦笑するしかない。




「えっと……いい天気ですね」



ありきたりな方法で話をそらしてみようと試みるがやり方があからさま過ぎる。
呆れた様子でため息をつく玲子は、そうねと言って手すりの方まで歩いてくると
自らも銀色に輝く手すりに腕を置いた。





 さわさわと風の音だけが屋上に響く。強く胸を打つ鼓動の音が聞こえてしまいそうで
てらは取り合えず玲子に話をふる。



「今年の夏休みは楽しかったですね、色々あって」



「ええ、そうね」



言っていることは同じでも先ほどとは口調が違う。てらは薄っすらと微笑んでいる
玲子の横顔をちらっと一瞥するがすぐに手すりに背中を向けたまま視線を空に戻す。



「……てらには心配もかけちゃったみたいだけど」

「へ?」



てらがもう一度視線を玲子に向けると、玲子も横目でてらの方を見やっている。



「人に聞いたの。私がイズムに連れて行かれたときすごく心配してたって」


玲子の言葉にてらは頬が熱くなるのを感じた。聞いたとはどういうことなのか、
それは容易に想像できた。
要するに玲子が連れ去られたとき、てらが泣き喚きながら兄が止めるのも聞かず
後を追おうとしたことが玲子の耳に入ったということだ。
顔から火をふく思いというのはこういうことだろう。てらは思わず大声を上げた。



「マジすか?!え、一部始終?うあー最悪だー!」



玲子の返事も待たずに一息にそう言うとてらは両手で顔を覆ってその場にしゃがみ込む。



「めっちゃカッコ悪い話聞かれてんじゃないですかー!うあーもうやだー!」



子供のように足をばたつかせてなおも叫ぶてら。
流石の玲子もその勢いに押され気味で、どうしていいか分からずにただうろたえている。



「そ…そんなに落ち込まなくても…それほどカッコ悪くもないわよ…?」

「…そう言ってもらえると少し気が楽になります…」



それほどと言うことは少しはカッコ悪いと思っているのだろう。
フォローになっているのかなっていないのか。
てらは肩を落としたまま力なく玲子の言葉に答えた。





 「でも…何でそんな無茶したの?」



少しの間の後、玲子は静かに尋ねる。この質問には正直てらも面食らった。
何でと聞かれても、そんなことは玲子を必死に追おうとした時点で分かったようなものだ。
彼女は自分の気持ちを分かって聞いてるのだろうか。
てらが訝るような顔をしていると玲子は少し唇を尖らせて自分の言葉に付け加えた。



「私がいなくなっても、てら達がしっかりして風紀委員会を支えなくちゃダメじゃない」



そういうことか、とてらは期待していなかったにしろ落胆を覚えた。




(そりゃフツー分かってたら聞いてこないよなぁ…)




がっくりとうなだれたてらだったがふと気付く。
だったらこれを機に玲子に言ってしまえばいいのでは。
こんな、彼女の言葉一つに一喜一憂することもなくなるのではないか。
 不意に何か正体の分からない衝動に駆られる。
その衝動に突き動かされて、てらは肩にかかる重い空気を押しのけ立ち上がった。




「…だって俺………―――」



渡瀬さんのこと―――。

言ってしまいたい。この気持ちが楽になるのなら。
ただまっすぐ彼女の目を見て、彼女の頬に触れて、一言言うだけでいい。
てらは少しうつむき目を閉じると深呼吸した。
 一拍空けてからゆっくりと顔を上げると、まっすぐ玲子の目を見つめててらは微笑む。






「…おっとこのこですから」



口をついて出てきたのはいつもの冗談。
意気地なしと言われても、てらに二人のこの微妙な間合いを詰めることはできない。
何とも言えない、きっと何でもないこの関係以上であることも以下であることも、
今のてらには許せない。
それは恐らく、彼女が好きだから。



「ふふ、何よそれ」



一瞬きょとんとした顔をした玲子は、口元に手をやるとそう言ってくすくすと笑う。
それにつられるようにてらも笑うと複雑な感情は更に交じり合ってどこかへ言ってしまう。



急いても仕方ないし、今日のところは。


少し強引に自分を納得させて、てらはもう少しこのギリギリの均衡の上に
身を置いてみることにした。



 てらが玲子に気付かれぬよう小さくため息をつくと不意に玲子は笑うのをやめて
そう言えば、と新しい話を切り出した。



「これも聞いた話なんだけど、私がいなくなった後
てらが『渡瀬さん亡き今〜』とか豪語してたって」



玲子は相変わらず微笑んでいる。しかしどこかその笑顔が威圧的に感じるのは
てらの思い違いではないだろう。



「え?!…いや、その…」



言った。確かに言ったのをてらも覚えている。
目に見えてうろたえるてらの様子に玲子の笑顔が更に威圧的になる。
というか、ちょっと引きつっている。



「本当なのね…?私を勝手に死んだことにするなんて、いい度胸じゃない」

「け、決して本気で言っていたわけではなくてですね!
あそこはああ言った方が場が和むかなぁと思いまして…」

「へぇ、私がいない間に人を笑いのネタにしていたわけ」

「そそそういうことでもなくてですね!な、何と言うか…その…」



必死に言い訳を考えてみるものの玲子の怒りを含んだ笑顔に気おされ
いつもの饒舌も回らない。
玲子は手に持っていたムチの柄でてらの頭をぺしっと叩くと
彼のうなじの辺りに手を伸ばして
学ランに似せた改造制服の高い襟をしっかりと掴んだ。




「問答無用!罰としてこれから校内パトロール3セットよ!
ほら、きびきびついてきなさい!」

「…はい…」




観念した様子で玲子に大人しく従うてら。
襟首を掴まれている関係で玲子からは見えないが、しかしその顔は確かに笑っていた。
幸せそうに。ただ、満足そうに。











本当にお疲れ様でした(笑)
そういうわけで中途半端な少女小説気味プラテをお送りいたしました。
最近世の中に「懐メロ」だとか「思い出のアニメ」だとか懐古趣味が
蔓延しているのでここで私の中に新しい何かを開拓してみようかと
少女小説ティックなものに挑戦してみることにしました。
が、何と言うか…ギャグですね(笑)。
明らかに「面白い」が書き手の意図した面白さじゃありません(笑)
というかむしろ私はサムいです。

 そもそも少女小説を書こう!と言っても
私は少女小説読んだことないんですよね(大問題)
まだ年齢が一桁だった時代(太古)に
「ときめきクラブ
恋とお菓子はキケンがいっぱい」(笑)

を斜め読みしたことがあるだけなので(少女小説?)
そもそも男が主人公な時点で少女小説ではn(以下略)。
そんなわけで非常にイタい出来となっております。最初に書けって話ですね。
こんなものでも笑っていただければ幸いです。

 今回またしても渡瀬さんとてらのプラテですね。
何だかんだいってNPC使ってばかりです。
先日チャットで「渡瀬さんを連れて逃避行in屋上」みたいな感じの
話が出まして、そこから妄想が膨らんでこうなりました。
要するにてらは根性無しとそういう話です(笑)
何だか一年分くらいのラブ思考を使い切ったので
もうしばらくラブはいいです。
書き手自身もこんなにヘコんでいるものをここまで読んでくださって
どうもありがとうございましたv






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